スマイリー
3 小さな恋の予感
無意味に高鳴る心臓の鼓動を、全身に感じる。


夕方になり、10月ともなればもう寒いくらいの気温であるが、反対に体は火照り、握りしめた右手にはじんわりと汗がにじむ。


進は、大崎有華の家の前に立っていた。


「…なにしてんだろう、俺」


進の本意でここに立っているわけでは決してない。


これはある種の事故だ。事故で、不可抗力だ。進はそう言い聞かせながらその場所に立っている。


なぜこれが事故で、不可抗力なのかというと、話は数十分前に遡る。
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