スマイリー
“積府方面、中田川行きの電車が参ります。白線の内側で―…”



突然、ホームに音楽とアナウンスが流れると、線路のはるか遠くに電車のライトが見えた。



「あ、やっと来た。あんたの顔もしばらく見納めかしら?受験で遊んでる余裕もないだろうし」



「藍さんは別ですよ。怖い夢でも見たらいつでもご連絡を」



「うっさい。他に言うことないわけ?」



そうやって言い合っているうちに、ゴオッ…と轟音を響かせてふたりの目の前に銀色の電車が入ってきた。



「その…ちゃんと大地さんに連絡して下さいね」



ためらいがちに、進は念を押した。



「分かったわよ。じゃあまたね、進」



藍が電車に乗り込むと、もう一度アナウンスが流れる。





――。



これでいい。



これでいいじゃないか。










そう、納得したつもりだったのに。







藍の手を引っ張って、進がもう一度藍をホームに引き戻したのは、本当に、扉が閉まる本当に一瞬前の出来事だった。
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