スマイリー
有華は、土曜に続いて月曜も学校を休んでいた。



いつもなら欠席者の配布物は机の中に入れておけば事足りるのだが、今日配られたプリントの中には、なるべくその日のうちに親の手元に届いて欲しいものもまざっており、誰かが彼女に届ける必要があった。


無論、その役目は進に回ってはこないはずだった。大抵は有華の女友達に渡されることになる。


ところが、突然その役目が進に回って来たのだ。


放課後、昇降口にいたあきらと進に、クラスメイトの松本美紅(ミク)が話しかけた。


「プリント渡しに行くことになってたんだけど、急に用事ができちゃってさ。前島くんたち、確か通り道じゃなかったかな、有華の家」


「ちょ、ちょっと待て。なんで俺らなんだよ。他の女子に頼んだらいいじゃないか」


隣にいたあきらが文句を言った。


「何言ってるの。中学生じゃないんだから。うちのクラス、有華の家に近い女子っていないのよ」


あきらをにらんで、美紅が反論する。にらまれて、あきらは少しひるむ。


「だってなぁ、ほら…、進もなんか言えよ」


進の頭を、有華の屈託のない笑顔がよぎった。


「…まぁ、いいんじゃないか?ヒマだし。届けておくよ」


「…忘れてた。お前に意見を求めた俺がばかだったよ」


あきらは土曜日のときの進の様子を思い出して、諦めた。


「ありがとう。有華には私から連絡しておくからね」


そう言うと、美紅はそそくさと下校してしまった。
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