スマイリー
「いてて…お前なぁ、そう楽観的にはなれないよ」



背中を自分の手でさすりながら、進はあきらに抗議した。



「なんで?ボーダー越えたんだし、もっと喜べばいいじゃん」



「まだ分からないだろ。去年のボーダー越えたっつっても、今年のセンターが簡単だったならボーダー上がるし」



進の結果は、西京大学に受かるためにとっておきたいセンター試験の最低得点を30点ほど上回っていた。



ボーダーラインと言われるこの基準は、1年前のセンター試験の得点を元にしていて、“この難易度の試験で〜点とれれば、合格率50%”ということを表している。



とすれば、もしもセンター試験が去年よりも大幅に易しくなっていたなら、ボーダーラインも大幅に上がっているはずである。



「大丈夫。センター試験の難易度のローテーション知ってるだろ。15年前から綺麗に、“簡単”“難しい”“もっと難しい”この繰り返しだ。さぁ問題。去年の難易度は?」



「…簡単」



「正解。今年は“難しい”の年だ。ボーダーは下がる」



そんなことを話しているうちに、正門に到着する。



ふたりは試験問題の検討をだらだら行いながら、教室に入った。
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