スマイリー
「センター失敗したとか」
進は、心の奥底で少しだけそれを願ってしまった。
有華がセンターを失敗して、進は反対に成功して、ふたりとも西京大学に、なんて。不届きな男だと自分でも思った。
「あいつに限ってそんなことはないんじゃないか?美紅に聞いてみるか」
「…美紅?」
「え?…あっ」
あきらははっきりと、しまった、という顔を見せた。
それを見て、進は確信を持った。そして、少しばかりいじってやろう、といういたずら心もわいて出た。
「まぁ、別に俺は何も思っちゃいないよ?あきら。呼び方が“松本”から“美紅”に変わっただけでそれが付き合ってる証拠になるだなんてことは、決してないしな」
「う…、な、なぁ、進」
「それにもしも、もしもな。そういう結果になったときは、何をおいても真っ先に、包み隠さず、親友の俺に話してくれるはずだもんな?なぁ、あきら」
あきらの顔をみると、あきらはさっと視線をそらした。あきらが赤面するところなんて、初めて見た。
「悪かった、悪かったよ。後でちゃんと話すから勘弁してくれ」
思っていたより真面目に謝られて、何だか進の方が恥ずかしくなった。