スマイリー
美紅に教えてもらった有華の住所は、進の帰宅の通り道ではなかった。
帰宅の際にいつも乗るのとは違う方面の電車でひと駅。下車してさらに徒歩5分。
大通りから少し奥に入った道沿いに、大崎家はあった。
あきらは、電車に乗るときに帰らせた。あきらの家は遠く、電車代もひと駅とはいえ、ばかにならないからと、説得して帰ってもらった。
多少文句をもらったが、
「ま、俺は大崎狙ってないからいいけど」
と、意外にもさっぱりした口調とニヤニヤ顔で承諾してくれた。
…よく考えれば、不可抗力でも事故でもなんでもない。
自分が自分のわがままで作り出した事態だ。
我ながら自分の行動力に驚かされた。しかし、これは決して有華が好きだからではない。
進自身が奮い立つきっかけをくれた有華に、面と向かってちゃんとお礼を言いたいからだ。あきらがいると、なんとなく場が真面目じゃなくなってしまうからだ。だから帰ってもらったのだ。
自分に言い訳をしているみたいで、進はひとりで赤面した。
ここでつっ立っていても始まらない。意を決し、進は家のチャイムを鳴らした。
ピンポーンとごくありきたりな呼び出し音に、変に緊張してしまう自分が情けなかった。
『はい』
インターホンから聞こえた女性の声は、有華であるとはっきり認識できるものではなかった。
有華の母かもしれないし、もしかしたら姉妹がいるかもしれない。そんな思いが一瞬で進の頭をめぐった。
「あ、あの、有華さんの友達、あ、いや、クラスメイトの前島です」
『ああ、進じゃない。ちょっと待ってて』
声の主は有華だった。挙動不審な自分のしゃべり方を、進は猛省した。
帰宅の際にいつも乗るのとは違う方面の電車でひと駅。下車してさらに徒歩5分。
大通りから少し奥に入った道沿いに、大崎家はあった。
あきらは、電車に乗るときに帰らせた。あきらの家は遠く、電車代もひと駅とはいえ、ばかにならないからと、説得して帰ってもらった。
多少文句をもらったが、
「ま、俺は大崎狙ってないからいいけど」
と、意外にもさっぱりした口調とニヤニヤ顔で承諾してくれた。
…よく考えれば、不可抗力でも事故でもなんでもない。
自分が自分のわがままで作り出した事態だ。
我ながら自分の行動力に驚かされた。しかし、これは決して有華が好きだからではない。
進自身が奮い立つきっかけをくれた有華に、面と向かってちゃんとお礼を言いたいからだ。あきらがいると、なんとなく場が真面目じゃなくなってしまうからだ。だから帰ってもらったのだ。
自分に言い訳をしているみたいで、進はひとりで赤面した。
ここでつっ立っていても始まらない。意を決し、進は家のチャイムを鳴らした。
ピンポーンとごくありきたりな呼び出し音に、変に緊張してしまう自分が情けなかった。
『はい』
インターホンから聞こえた女性の声は、有華であるとはっきり認識できるものではなかった。
有華の母かもしれないし、もしかしたら姉妹がいるかもしれない。そんな思いが一瞬で進の頭をめぐった。
「あ、あの、有華さんの友達、あ、いや、クラスメイトの前島です」
『ああ、進じゃない。ちょっと待ってて』
声の主は有華だった。挙動不審な自分のしゃべり方を、進は猛省した。