スマイリー
しばらくして、有華が玄関のドアを開けた。



「面談のプリント、早めに受け取っておいた方がいいからってさ」



プリントを受け取ると、有華はいつもの笑顔を見せた。



「ありがと。助かったあ」

進は、有華というよりは、有華の笑顔が好きだった。有華の笑顔が好きならば、自分は有華も好きなのか。とにかく、ここのところ彼女の笑顔が頭から離れない日々が続いていた。



有華は、動きやすい上下のスウェットに、学校のカーディガンを羽織っていた。



「悪い、起こしちゃった?」

「ううん、テレビ見てたから。体調ももうだいぶ良いよ」



「そっか」



少し会話をしたら、緊張もほぐれてきた。そもそも、なぜ有華相手に緊張しているのか。普通に接してくれる有華を見ていたら急に馬鹿らしくなってきた。



「…なに。にやにやしちゃって」



「あ、えっ、俺いまにやにやしてた?」

「してた」



「ところで、明日の英語の課題見せてくれない?」

「話をそらす上に随分ストレートなお願いね」



英語の担当の松野は、その厳しさで校内でも有名な教師だ。課題がやっていないなんてことは、許されるはずもない。
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