スマイリー
正門を出てしばらく歩くと、だんだん頭も冷静に回り出してきた。
「敬太先輩って、マジでか…」
有華が西京に行くのは、敬太がいるから。
進が西京を受けるのとは無関係だった。なんとなく、うっすらと、有華は一緒に帝二を受験する提案にも賛成してくれるだろうと思っていた。
有華は自分を好きなのでは。
そう半年近く薄々ではあるが頭の端に留めていた。
笑えない冗談だ。
それ以上に有華の必死の弁解が、余計に胸に大穴を開けた。
「またフラれたな、しかも結構ストレートに」
有華の弁解は、“好きな人がいるから進とは付き合えません”と、ほぼ同じ意味合いに聞こえた。
有華は進の気持ちに少しは気付いていたのではないか。だから、西京に行く理由を言いづらそうにしていたのでは。
「はは…笑えねぇ。へこんだ…あはは」
有華の気持ちを見事に勘違いしていた自分の滑稽さと、有華に気を遣わせた罪悪感が入り交じって、進は笑い方を忘れた顔で無理やり笑った。