スマイリー
放課後、ロッカールームを開けた進は、その空気の重さに狼狽した。



1年生が数人、進に挨拶すると、思い出したようにジャージに着替え出す。4人いた2年生は進の顔を見て、互いに顔を見合わせて困惑の表情を見せた。



3年生の姿はもうない。皆夏休み前の大会で引退した。たまに1人、2人、様子を見に来る者もいるが、今日は来ていないようだった。



「おっす。何かあった?」



「進先輩。翔一先輩が、部活やめるって」



1年生の中山がこわごわと口を開いた。



「マジで?」



「5分くらい前だ。それだけ言っていきなり出ていっちゃったんだよ。突然だったからみんな驚いて。今しがた笠松が探しに行った」



チームメイトの古泉が説明した。笠松は陸上部の男子部新部長。責任感から止めに行ったのだろう。



「どっちに追いかけた?笠松」



「正門の方」



「西門から出てるかも。俺がそっち側探すわ。みんなはいいから人数揃ったら練習始めてて」



「悪いな、頼む」



硬い表情をしている古泉の肩をポンっと叩いて、進は部室を飛び出した。
< 182 / 278 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop