スマイリー
「なんとか、やめないで頑張れないか?お前リレー選手だし、お前がいないと笠松たちが困る」



進はなるべく落ち着いて説得するよう務めたが、内心は翔一の無責任さに腹が立ち始めていた。



「1年を使ってくれ。川上あたりなら十分戦えるよ」



「バトン練習が不十分だろう。形にはなっても地区で勝てないし、第一お前の方が足が速い」



「…なぁ、進。なんですんなりやめさせてくれない」



まるで部活をやめたがっているかのような言い方に、進はカチンときた。



「部活に入った時点で、もう翔一ひとりの体じゃない。みんなのモチベーションにも関わる。お前は笠松を裏切ってるんだ。分からないのか?」



進は静かに言い切った。進がつかんでいる翔一の腕が、ぴくっと動いた。



「…親との約束なんだ。分かってくれよ」



「親のせいにするな。成績が下がったのは親のせいじゃない」



「……」



翔一は黙ってしまった。腕は小刻みに震え、うつむいたまま口を閉ざしていた。
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