スマイリー
10月半ば、この時期の進の学校では、ほぼ全ての授業がセンター試験の演習である。もちろん英語もそう。だが、大学入試はセンター試験だけではない。センター試験と大学ごとの二次試験の合算で合否が決まる。


だから、例えば英語では、授業ではマーク式のセンター試験演習を行い、課題、宿題として記述式の入試問題を解かせるというシステムがとられたりする。


この記述式というのが厄介で、センター試験よりずっと難しいと感じる生徒がほとんどである。


その反面、英語圏からの帰国子女などは同じ問題でも満点近くとってしまうものだから、数学と並んで差がつきやすい教科であるのは全受験生の認識しうるところであった。


大崎有華は、帰国子女ではない。それでも、その英語力は帰国子女の生徒たちにひけをとらない。


それどころか、受験に必要な文法知識や単語、いわゆる受験英語に関しては、まさに学年トップ。


クラス内でも昼休みや放課後になると、厳しい英語担当の松野より有華の方に質問が殺到する。その質問のひとつひとつについて、丁寧に説明をしている有華を、進は毎日のように目撃していた。


そんな有華が、今自分の隣で英語の課題を見てくれている。しかも彼女の自宅、彼女の部屋で。

学年トップが付きっきりで勉強を見てくれるだなんて、普通に考えてこんなに有益なことはない。


ただ、進には課題の内容など頭に入るはずもなかった。
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