スマイリー
もう一度敬太は進と向き合って、言葉を接いだ。



「翔一は、進に成績のことを言われてそれだけに対して怒ったわけじゃないと思うよ」



「そうですかね」



まだ左の頬は熱いまま、口の中に広がっていた血の味はココアの味に一時的に消されているが、傷口は2日は残るだろう。



「どっちにしろ殴られたことには怒りを隠せませんね、俺は」



敬太から視線を外して、進はうつむき加減で吐き捨てた。



「翔一が成績不振を理由に部活をやめるのは、実は俺も知ってたんだ」



「え…」



思わず進は顔を上げて敬太を見た。敬太から笑顔は消え、真剣なまなざしで進を見ていた。



「俺と大地と市川は知ってた。昨日の昼休み、それぞれに謝りに来てたんだ。『部活は続けたいけど、このままじゃ勉強も部活も中途半端になる、きっと後悔するから』って。泣いてたよ、翔一」



進は言葉を失った。急に自分が悪者になった気分だった。
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