スマイリー




「本当に翔一は辛そうだったよ。きっと、ずいぶん悩んだんじゃないかと思うんだ。もちろん、進の言う通り、単純に翔一が勉強をサボった結果かもしれない。進は結構厳しい言葉をかけたみたいだし、反省してるようには見えなかったんだよね。だけど、翔一は本当に反省していた。反省してる姿勢を同級生には見せたくなかったのかな」



そう言われると、翔一の言葉の端々に、そういうヒントがちらついていたように思えた。それに気づけなかったことに、進は罪悪感を感じ始めていた。



「なにより、」



敬太がもう一度右手の人差し指を立ててにこりと笑った。



「練習を見てれば分かる。あいつはめちゃめちゃ部活好きだよ。短距離も、リレーも。グラウンドの整備は部内で一番丁寧だし、スパイクの手入れも行き届いてた。陸上が嫌いなワケない。だから陸上部をやめたくて勉強サボったなんてことは、絶対ない」



進は立ち上がれなかった。



“お前は笠松を裏切ってる”
“成績が下がったのは親のせいじゃない”



翔一に浴びせてしまったセリフが脳内で繰り返される。



「翔一の立場で考えてやれなかったのは、進が悪いと思うよ。あ、もちろん殴ったのは翔一が悪いけどさ。部活を続けられる進にやり場のない怒りをぶつけたんだろうね」



「…すみません」



進は消え入るような声で謝罪の意を述べた。
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