スマイリー
センター試験が終わった後の授業は、二次試験の対策問題ばかり。国語、数学、英語、地歴公民、生物、化学、物理、その他もろもろ。自分が二次試験で受験する科目の試験対策だけを受ければ良い。



進が受けるのは国語、数学、英語。どれも各大学の過去問題を80分かそこらかけて解き、残り40分で教師が解説、という具合だ。



この日は朝の2時間が数学、3、4限が国語、昼休み後の5、6限は英語。書くことに比較的エネルギーを使わないマーク式テストとは違い、すべて記述式の試験対策で授業を埋め尽くされると、さすがに頭が痛くなる。



ホームルーム開始5分前に教室に到着した進は、後ろの引戸を開けて教室に入った。入ってすぐの机に座っているのは学年一の秀才、大崎有華。



「よう、大崎」



「よう、前島ぁ」



机に突っ伏したまま、有華は右手を挙げて進に応えた。英語担当松野の物真似にも、キレがない。



「昨日も遅かったわけ?」



「うん…ちょっと数学に行き詰まってね」



「そんなに根詰めなくても受かるんじゃないか」



「勉強に“やり過ぎ”は存在しないよ、よく覚えておくこと」



「へいへい」



進はまた浅い眠りについたらしい有華の後ろを通過、窓際の自分の席についた。あきらはまだ来ていない。



「あれ、珍しいな」



真後ろの空席を気にしながら、進は英語の単語帳を開いた。ホームルームもまるまる使って昨晩の復習をすることにしている。
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