スマイリー
もっとも、「名声」には大抵よくない噂も付きまとうものである。



実際のところ有華も例外ではなくて、進の聞く限りではその割合に恵まれた容姿からか、異性がらみの噂が多かった。



それでも彼女は男女関わらず信頼を集め、友達も多かった。クラスのほとんどの生徒は悪質な噂よりも、実際に接した有華の人柄を信じたのだ。



もちろん進もそのひとりだった。有華ほどできた女性というのは、同学年には思い付かなかった。



学年トップの学力の持ち主でありながら、彼女の立ち居振舞いには全くいやみのかけらもない。



本当に人並み程度に勉強しているようにしか見えないのに、普通の女の子でしかないのに。



有華からは、なにか他と違うオーラのようなものが感られた。



「…なに?進」

「あ…、あ、いや、何も。また俺ぼーっとしてた?」



「してた。っていうか、あたしの顔にらんでた。じぃって」

「え、マジ?ご、ごめん」



有華という人物像に思いを馳せながら、小さな緊張感にさいなまれながら、かくして進はやっとのことで英語の宿題を終了させた。
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