スマイリー




核心を突かれた気分だった。有華の真っ直ぐな視線が、進の眉間を鋭く貫いた。



「昔言っただろう。誰も大崎に文句は言えないよ。東大は無理だけど、帝二の合格者数だったら俺が増やしてやる」



口から出てくる言葉とは裏腹に、本当は複雑な気分だった。大学のレベルと有華の学力との均衡もそうだが、なにより敬太の存在は進にとっていくらかショックだった。



それでも、有華に余計な迷いを与えてやるよりはずっといい。行きたい大学に行くのが、多分有華にとっても正しいはず。それはおそらく進自身にとっても。



有華は、すそをつかんだ手をぱっと放して進を見上げた。



「あたし、進みたいな人に会えて、幸せだと思う」



「そうかい。時間あったらまた英語教えてくれ。明日土曜だけど、俺学校にいるからさ」



「じゃああたしも行くよ、学校」



まだ疲れた様子だったが、有華はやっといつもの笑顔を見せた。



「そりゃ助かるね」



そう言いながら、進は有華の表情に心底ほっとした。
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