スマイリー
有華は少しの間黙っていたが、やがて口を開いた。
「今までは無理に聞かなかったじゃん。本当どうしたの、急に?」
有華は悲しそうな顔をして、進に訴えかけた。何かに裏切られたときのような、悲痛な顔だった。
「事情が変わった。大崎は、東大にも行きたがってるから」
有華はうっと口をつぐんだ。
「なんで、そんな風に思うの?」
「昨日ちょっと思い立って、調べて見たんだ。東大の受験科目。国、数、英、の他に、化学、生物、物理から1科目、地歴公民から1科目。計5科目」
有華は複雑そうな顔をして、進の話を聞いている。
「大崎、世界史と生物勉強してるよな?それって、そういうことだろ」
進の顔を見つめたまま、有華は口を真一文字にくっと結んで、無言を守った。
「東大受ける準備はしてるのに、口では西京に行くって言ってる。なんで?西京なら後期募集もあるし、前期で東大受けたらいいじゃん。先生たちにあんなに反抗してた意味が分からない」
有華はまだ何も喋ろうとしない。
「なぁ、大崎」
「進には関係ないよ」
切り捨てるような有華の言葉に、進は固まるしかなかった。