スマイリー
「俺は、大崎が」



顔が燃えるように熱い。



「俺は大崎を」



接続詞を変える。



「大崎を…ええと、尊敬してるから」



有華を含む見物人が、一斉にガクッと肩を抜かした気がした。それこそ新喜劇みたいに。



「ばか」



口を尖らせてそれだけ言うと、有華は再び進に背中を向けて、小走りでホームへの階段へ吸い込まれていってしまった。



はっと気がついて周りを見ると、通行人の人だかりはとっくに解散して、いつもの駅に戻っていた。



いや、人だかりなんて初めから進の妄想だったのかもしれない。



「ヤバいな…伝わってないかも」



本番に弱い性格を露呈してしまった。



「まぁ、一応謝れたし、よしとするか」



本当に、西京だろうと東大だろうと、関係なく有華はうまくやっていくだろう。進や日下部の説得なんて関係なく。



本人がどう思っているのかは別として、本当は有華にとっては進路選択など、些末な問題に過ぎないのかもしれない。
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