スマイリー
成功を約束されている人間と言うものは、確かに存在するのだから。例えば大崎有華であるとか。
「あっ、しまった。藍さんとのこと」
藍とは何でもないと、説明をしておけばよかった。いや、というより、それが一番言うべきことだったのではなかろうか。
「終わったことはしょうがないか」
それに、あんな精神状態で藍との関係をレクチャーしても、言い訳にしか聞こえないだろうし。
独り言もそこそこに、進は学校への道を再びたどる。大地と敬太からはまだ聞きたいことも多いし、なにより懐かしい。
ふたりからは大学の話を、そして大地からは藍の話を、敬太からは有華の話を、それぞれもう少し聞きたい。それから、ついでに石井コーチには陸上部の近況を。
大地たちが帰ってしまう前に、グラウンドに着かなければ。進はまた走るスピードをあげて、風のように学校を目指した。
“ばか”
走りながら有華の最後のセリフを思い出して、少しにやける。
それに気をとられ、また赤信号を無視しようとした進を今度はトラックの大きなクラクションと運転手の罵声が阻んた。
空は快晴。気温低め。真冬にしてはちゃんと着込めば過ごしやすい、珍しい朝のことだった。