スマイリー
電車に乗り込むとマフラーは暑すぎる。マフラーを首から取り払って、カバンに突っ込む。



いつもと違う方面の電車は、いつもと同じ速度と揺れで、進たちを目的地へ運ぶ。



周りは進と同年代の若者がほとんどだ。制服、私服とまちまちだが、みんな前期試験を受ける受験生に違いない。



センター試験のときは、なぜか全員自分より頭が良さそうにみえて、相当あせった。今はそうでもないのを考えると、わずか1ヶ月で人はこうも成長できるのか、と、感慨深い思いになる。



実際、相当に勉強したのは確かだ。特にここ数週間は寝る間も惜しんで。ある程度自信が持てているのもそのおかげだと思われる。



有華と改札で別れてから3週間。当然とはいえるが、彼女とは一言も話していない。



あの後私大の入試期間が終わってすぐに自由登校となり、それから有華は学校には一度も来なかった。



進を避けているのか、いや、腹を立てて顔も見たくないということだろう。



英語に不安があるのは多分そのせいだ。結局有華から教わる機会は自分で潰してしまったし。
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