スマイリー
だがその分、数学と古典は問題集が真っ黒になるほど勉強した。英語の語彙もだいぶ増えた。怖かったが、何度も松野に質問しに行った。
今進にできる精一杯を、全力でやり抜いた3週間。力をつけるにはあまりに短い3週間。
何だかんだあの頃は充実していたなどと、何年後かの自分はそう振り返るかもしれないが、今の率直な感想は、辛かった。もう二度とやりたくない。もう二度と。
とにかく今日、明日の入試をもってやっかいな英語とはおさらばだ。後期の西京は数学一教科。天にも昇る思いとはこのことか。
「なぁに受験終わった気になってんのよ、お前は」
小島あきらが、いつの間にか後ろに立っていた。
「ぶつぶつ独り言なんて言っちゃってまぁ、気持ちの悪い」
「言うじゃないか。お前は合格ほぼ確実だもんな」
あきらは西京の法学部を受験する。元々帝大にも受かる学力の持ち主だが、財政的問題で、安牌を切ったというところだ。
「リアルに受験終わったようなもんだよ、俺は」
あきらは悪びれる風もなく、満面の笑みを進にみせた。
「いっぺん殴らせろ。グーで」
「冗談だよ。俺だって不安だったんだ。こんなとこでお前に会えて安心した」