スマイリー
「何言ってんだ。俺は感謝してるんだよ。結果的には部活にも戻れたし、リレーの地区4位だって、満足いく結果だったさ」
昼から駆けつけた石井コーチのスピーチが始まっている。部員たちは石井がしゃべるたびに野次を飛ばし、勝手に盛り上がっていた。石井は相当しゃべりにくそうだ。
「進が背中を押してくれたって、俺は思ってる。心学社を受けられたのもお前のおかげだ」
「もう勘弁してくれ。首筋のあたりがむずがゆいよ」
こんな話をしていると、高校3年間そう悪くなかったように思える。人並みに挫折や恋愛も経験したし。
帝二の結果は来週分かるが、結果はどうあれ進は全力を出せた。それで満足だった。
近いうちに傘代を藍に払う必要があるが、まぁそれは後回しにして、今はとにかくこのどんちゃん騒ぎを楽しもうと思った。
「お、進。正樹が呼んでるぞ」
「…え」
翔一の指差す先、正樹がボウルに何十個も生卵を入れて進の名前を叫んでいる。
嫌な予感はするが、今日は無礼講だ。進は苦笑を浮かべながら得体の知れないゲームに参加すべく、正樹のもとへ向かった。