スマイリー




「心は込もってなくても嬉しいよ。沙優ちゃんは元気か」



進は淳也の次期彼女、岩瀬沙優とも面識があった。沙優の持つ悩みを解決しようと孤軍奮闘したこともあった。



「今やクラスの人気者ですよ。悪い噂も聞かなくなったし」



「そうか。だいたいは正樹から聞いてたが、身近なヤツから直接聞けてよかったよ」



タオルを首にかけて、身震いをする。寒い。進は心に誓う。正樹め、後で覚えてろ。



そんな進の姿を見て、淳也はクスクスと声を出して笑った。健康的なスポーツマンの爽やかスマイルは、男でも変な気を起こしそうになる。



「その、ありがとうございました」



淳也はぎこちなく頭を下げた。



「沙優を助けてくれて」



淳也は進に感謝してくれているようだった。頭を下げるその姿すら清々しい。



「俺が出したのはアイディアだけだ。あとは正樹の行動力と、沙優ちゃんの魅力と、お前の包容力」



「包容力?」



「愛の力だ、要するに」



進は敬太を真似して、右手の人差し指をピンっと立てた。



「よくそんな恥ずかしいこと真顔で言えますね」



「だって自分のことじゃないもん」



淳也はまた笑って、かかとを踏んだ靴を履き直した。
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