スマイリー
「なんですか?人の顔見て笑うなんて」



藍の様子に、進は口を尖らせた。



「進って、その子のこと好きなんじゃないかしら」



女の勘は鋭いとはよく言ったものだが、藍の勘はさらに鋭い。進はぎくりとして、また目を逸らした。



「…さぁ。よく分かんないです。あー、色々お世話になってることは、その、確かなんだけど」



話しているうちに顔がみるみる赤くなっていくのが自分でも分かった。



自白も同然だ、と、進は思った。



「あんたもあんたなりに青春してるのね。ああ、じゃあ、もう行かなきゃ」



右の手首にはめた小さな腕時計に目をやると、藍はバッグを肩に掛け直した。



「すいません。明日も早いのに」



「何言ってるの。呼び止めたのはあたしなんだから。何かあったらいつでも連絡していいからね」



「はいはい」



進が右手でOKサインを送ると、藍は駅に向かって歩きだした。



小さくなっていく藍の姿を、進はぼうっと眺めていた。
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