スマイリー
ふと、藍の言葉が脳内で再生された。



“何かあったらいつでも連絡しなよ”



藍の口癖だった。



心地よい懐かしさが進の体にまとわりついて、離れようとしなかった。



「あ…」



県外の大学…半年間、全く会わなかったのだ。次に藍と会える保証はもちろんない。



もう、会えないかもしれない。



不意に、進はそう思った。






「藍さんっ」






想像よりずっと、大きな声が出た。




大分小さくなっていた藍の姿が、進の声に反応してくるりと振り返った。



「あのっ、メシ行きましょうっ、あ、こ、今度!俺、おごるんでっ」



もしかしたら有華にまで聞こえてしまうかもしれないほどの声ではないか、と、進は思った。



藍の表情は進のいる場所からは到底読み取れなかった。



その代わりに、藍は両手で大きなマルを作って、二度飛び跳ねた。



進は精一杯の笑顔を作り、先刻の有華のように、藍の姿が見えなくなるまで大きく大きく手を振った。



藍の姿が見えなくなった。



秋風がびゅうっと進の背中を押した。



“よく言ったな”



そう褒められているようだった。



「さんきゅー」



風が吹いていった方向に叫んでみた。



なんだか可笑しくなってきて、進は声を出して笑った。
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