スマイリー
6 羨ましい悩み
濃厚な水色の空に、真っ白の薄雲が映える。絶妙なコントラストは廊下の窓で四角く仕切られて、まるで一枚の風景画のようだ。



廊下をふらふらと歩きながら、進は窓の外を眺めた。



秋晴れ。最近は滅多に雨が降らない。快晴の日々がここ1週間続いている。



11月に入り、寒さは段々と確実に厳しくなっていくが、さすがに昼どきは暖かい。ただ、時折吹き付ける秋風が、木々の紅葉を容赦なく振り落としている。



進は学校の昇降口の前にずらり並んでいる自動販売機の前まで来ると、財布の中の小銭を漁った。



「1、2、3…だめか」



小銭を諦めて千円札を出し、投入口に入れる。缶ジュースからペットボトルまで、全ての商品のボタンが明るいオレンジ色の光を灯した。






火曜日。バッティングセンターでの一件から、1週間が経った。



進のストレートを後頭部に受けた金髪男の安否が危ぶまれたが、学校側に何の連絡も入っていないようだし、あのとき他の不良たちと一緒に進たちを追跡していたはずなので、命に別状はないだろう。



あの事件で知り合った淳也と沙優は、教室が離れているためか、あれから一度も会っていない。



ただ、あきらが一度だけふたりが並んで下校していたところを目撃している。先週の金曜日のことだ。



付き合っているとは言わないまでも仲良くやっているようで、他人事ではあるがなんだか微笑ましい。
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