スマイリー
「…あーもう」
頭をぐしゃぐしゃと掻いてうなる進を見つけて、声をかけるひとりの女子生徒の姿があった。
「おつかれ、進」
不意に肩を叩かれ、進は驚いて振り返った。
「…おお」
「冷た。なに?その態度」
大崎有華(ユカ)。
茶髪がかったショートヘアに小柄で華奢な体つき、明るい笑顔がトレードマークの大崎有華は、3年で初めて同じクラスになった、学年トップクラスの秀才である。
と言っても、休み時間にさえ英単語を覚えているようないわゆるガリ勉タイプではないらしい。
それどころか、勉強は嫌いだけど仕方なくやってるの!と豪語し、ことあるごとに友達と騒いでは、いつも明るくクラスを盛り上げている。
男子の間でもなかなかの人気を誇る少女である。
「教室出ていったとき、元気なかったから心配して声かけたのに。背中が泣いてるぞ!前島ぁ」
そういって有華は進の背中をバシッと叩いた。
彼女の魅力はこの底無しの明るさにある。
朝8時の補習授業からこんな夕方まで学校に缶詰めにされて、ここまで快活な生徒などそうはいない。
「お前に心配されるとよけい落ち込むって」
秀才の有華に自分の気持ちなんぞ分かるものか。進は有華の明るさにいら立ちを覚えた。
「ははぁ、模試が悪かったんでしょ。ていうか、進」
進の悩みを一発で見抜いたかと思うと、いきなりその腕をぐいっとひっぱった。
「歩くの速すぎ」
進を見て微笑む有華に、進は自分の心の中のとげとげしたものの、そのとげとげの先が、少しまるくなったような感じがした。
有華につられて進も思わず表情をゆるめた。
「俺、今日初めて笑った気がする」
「なにそれ。なんかそのセリフ、むずむずする」
進は歩く速度を緩め、有華と並んで歩いた。
思い出してみると、これが有華との本格的な出会いだった。そんな風に進は振り返る。
頭をぐしゃぐしゃと掻いてうなる進を見つけて、声をかけるひとりの女子生徒の姿があった。
「おつかれ、進」
不意に肩を叩かれ、進は驚いて振り返った。
「…おお」
「冷た。なに?その態度」
大崎有華(ユカ)。
茶髪がかったショートヘアに小柄で華奢な体つき、明るい笑顔がトレードマークの大崎有華は、3年で初めて同じクラスになった、学年トップクラスの秀才である。
と言っても、休み時間にさえ英単語を覚えているようないわゆるガリ勉タイプではないらしい。
それどころか、勉強は嫌いだけど仕方なくやってるの!と豪語し、ことあるごとに友達と騒いでは、いつも明るくクラスを盛り上げている。
男子の間でもなかなかの人気を誇る少女である。
「教室出ていったとき、元気なかったから心配して声かけたのに。背中が泣いてるぞ!前島ぁ」
そういって有華は進の背中をバシッと叩いた。
彼女の魅力はこの底無しの明るさにある。
朝8時の補習授業からこんな夕方まで学校に缶詰めにされて、ここまで快活な生徒などそうはいない。
「お前に心配されるとよけい落ち込むって」
秀才の有華に自分の気持ちなんぞ分かるものか。進は有華の明るさにいら立ちを覚えた。
「ははぁ、模試が悪かったんでしょ。ていうか、進」
進の悩みを一発で見抜いたかと思うと、いきなりその腕をぐいっとひっぱった。
「歩くの速すぎ」
進を見て微笑む有華に、進は自分の心の中のとげとげしたものの、そのとげとげの先が、少しまるくなったような感じがした。
有華につられて進も思わず表情をゆるめた。
「俺、今日初めて笑った気がする」
「なにそれ。なんかそのセリフ、むずむずする」
進は歩く速度を緩め、有華と並んで歩いた。
思い出してみると、これが有華との本格的な出会いだった。そんな風に進は振り返る。