スマイリー
有華の変貌ぶりに、進は当惑した。
だがそれ以上に、有華があまり人には言わないらしい悩みを自分に打ち明けてくれたことが嬉しかった。
「じゃあ、他に行きたい大学があるってことだ、大崎は」
有華に合わせてその場に座り込んでいた進は、飲み終わったコーヒーをゴミ箱に捨てるため、立ち上がった。
「うーん、まあ、一応は」
自販機から数メートル離れた所にあるゴミ箱に、缶を捨てに立った進の背中に向かって、有華が呟いた。
有華のためらいがちな様子を察した進は、ゴミ箱に空き缶を投げ入れて、自販機の前まで戻って来ると有華の隣に再び腰を下ろした。
「どこ?」
「…西京」
進は驚いて有華の顔を見た。ふてくされたような有華の横顔は、ほんのり紅みをおびているようだった。
「西京って…なんで」
「うーん、なんでって言われてもなあ」
ぬるくなったココアを飲もうとして、有華は缶のフタのところに爪をひっかけた。
うまく爪が引っ掛からずに、3、4回そのままカツンカツンとやったところで、進は有華から缶をひったくってフタを開けてやった。
「ありがと」
缶を受けとると、有華が言った。
西京大学は、県内でもかなり上位の大学ではある。進の学力では合格率20%以下の、E判定。それでも、有華が受けるには明らかに物足りないレベルだ。
「それ、岡田さんに言ったのか」
「言った。さすがの岡田先生も驚いてた」
「他の友達には?」
「言ってないよ。だって、なんか感じ悪くない?あたしが西京受けるのって」
確かに、有華は校内のテストも、全国規模の模試も、学年で常にトップだ。模試では県内にひしめく何万人もの受験生の中で2ケタの順位をとることもあった。
そんな有華が今、西京大学を受けても、楽勝で合格するに違いない。
ただ、進の学年で西京を受験しようとしている、そこそこ頭の良い生徒たち、特にその勉強で苦労している生徒にとっては当然面白い話ではないだろう。
だがそれ以上に、有華があまり人には言わないらしい悩みを自分に打ち明けてくれたことが嬉しかった。
「じゃあ、他に行きたい大学があるってことだ、大崎は」
有華に合わせてその場に座り込んでいた進は、飲み終わったコーヒーをゴミ箱に捨てるため、立ち上がった。
「うーん、まあ、一応は」
自販機から数メートル離れた所にあるゴミ箱に、缶を捨てに立った進の背中に向かって、有華が呟いた。
有華のためらいがちな様子を察した進は、ゴミ箱に空き缶を投げ入れて、自販機の前まで戻って来ると有華の隣に再び腰を下ろした。
「どこ?」
「…西京」
進は驚いて有華の顔を見た。ふてくされたような有華の横顔は、ほんのり紅みをおびているようだった。
「西京って…なんで」
「うーん、なんでって言われてもなあ」
ぬるくなったココアを飲もうとして、有華は缶のフタのところに爪をひっかけた。
うまく爪が引っ掛からずに、3、4回そのままカツンカツンとやったところで、進は有華から缶をひったくってフタを開けてやった。
「ありがと」
缶を受けとると、有華が言った。
西京大学は、県内でもかなり上位の大学ではある。進の学力では合格率20%以下の、E判定。それでも、有華が受けるには明らかに物足りないレベルだ。
「それ、岡田さんに言ったのか」
「言った。さすがの岡田先生も驚いてた」
「他の友達には?」
「言ってないよ。だって、なんか感じ悪くない?あたしが西京受けるのって」
確かに、有華は校内のテストも、全国規模の模試も、学年で常にトップだ。模試では県内にひしめく何万人もの受験生の中で2ケタの順位をとることもあった。
そんな有華が今、西京大学を受けても、楽勝で合格するに違いない。
ただ、進の学年で西京を受験しようとしている、そこそこ頭の良い生徒たち、特にその勉強で苦労している生徒にとっては当然面白い話ではないだろう。