スマイリー
「冷めた人ってなんだよ」



「だって、進って嫌なことがあるとすぐ投げ出すタイプっぽいじゃん」



有華は進の顔を見て笑った。寂しさとは無縁の屈託のない笑顔。進の好きな、いつもの笑顔だ。



「あぁ、模試が悪かったらすぐ志望校落としたりしそうってことか」



「うん。でも意外に頑固なんだね。なんで西京に行きたいの?」



西京に行く理由。



あまり考えたことはなかった。進は思ったままに話すことにした。



「なんか、特別これがやりたいってことはないんだけど。一種の挑戦みたいな」



「頭良かったころの自分への挑戦?」



空になったココアの缶を捨てるため、有華が立ち上がった。



女子高生らしいスカート丈。座っている進は、角度の問題によりとっさに目を伏せた。



「ま、まぁ、全体的な話でね」



「先生や、自分より頭いい人たちへの挑戦とか?」



「まぁそれもある」



進は、ゴミ箱の所まで小走りで向かって行った有華に返答した。



「なるほどね。あれ、なんで立ってるの?」



「…ちょっとね。大崎は教えてくれないのかよ」



「何が?」



有華が戻って来て、進の隣に座ったのを確認してから、進も再び腰を下ろした。



「西京だよ。さっきはごまかしてたけど、なんで西京?」



「うーん、内緒」



「…そっか」



別に、無理に聞く気はなかった。聞かれたくないことは、むしろ進の方が多く持っている。学力のことや、有華のことや、藍のことや。
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