スマイリー
電車は徐々にスピードを緩め、学校の最寄り駅で停車した。



扉が開くと、冬の冷気が容赦なく乗客を襲う。ふたりは急いでマフラーを首に巻き、電車を降りた。



「バスケ部の1年エースだったら、そりゃモテるわな」



進はぼやきながら時刻を確認した。



携帯のディスプレイの右上に表示されているデジタル時計は、7時5分を指したところだ。



「あたしも、周りのみんなと同じで、ただ淳也くんの練習とかを体育館で見てただけだったんです」



自分の予想があまりにも見事に的中したので、進は改札口までの下りの階段を5段は踏み外しそうになった。



「でもあの一件で、メルアド教えてくれたし、普段でも向こうから話しかけてくれたり…」



夢見心地に、沙優が呟いた。



ここで“淳也も沙優が好きだ”と打ち明けてしまえば、どんなに手っ取り早いだろうか。



エンディングが分かっているロールプレイングゲームほど、つまらないものはない。



だが、些細な進展を心から喜んでいる沙優を見ていると、ここで水を差すのはやはりナンセンスなように思える。


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