スマイリー
その後の進といえば、特に変わったことをするでもなく、午後もただ淡々と英語の入試対策問題をこなした。



英語の入試対策は2時間続きの演習なので、それが終わると3年生は下校してよいとされているが、実際にはそのうち3割から4割程度の生徒は校内にとどまる。



任意で補習授業を受講したり、教室で自習をしたりする生徒が多いようだ。



今日の進は入試対策のあと、教室で自習をする側に入った。数学の帰り補習は今日はないようで、勉強するのも家よりはまだ教室の方がはかどる。



…と、言うのは真っ当な理由であるけれども、進にはもうひとつ理由がある。今日中に会っておきたい人間がいるからだ。



その人物は今ごろ3度の飯より好きなバスケットボールに従事しているのであろう。



もちろん、今日必ず会わなければならない、と言うわけでもない。極端に言えばいつでもいい。



だが、まあ話がややこしくなる可能性がある以上は早めに会っておくに越したことはなかろう。



かくして時の流れは退屈な自習時間をすっとばし、すっかり日も沈んで暗くなった部活終了時刻の体育館前から話は始まる。
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