スマイリー
日本史のセンター対策は、知識を問う問題が9割9分。しかもマーク式なのでものの20分程度で解き終わる。



だから、そのあとは実質自由時間。他教科の自習をするもよし、雑談をするもよし、寝溜めをするもよし。



「さ、俺は藍先輩と大崎と沙優ちゃんに囲まれてカラオケに行く妄想でもしようかね」



「…ケンカ売ってないか?」



「とんでもない。うらやましいなぁと思っただけさ」



意地の悪い笑みを浮かべて、あきらは進の背中にどす黒い皮肉をぶつけた。



「お前なぁ…」



「おう、分かってるよ?沙優ちゃんは小林淳也とイイ感じ。藍先輩は好きな人がいて、デート現場も俺が目撃済み。大崎とは、脈ありかと思わせてからここ1ヶ月で進展ゼロ。だから3人についてくどくど言われる筋合いはないってか」



「…確認するが、悪気はないんだよな、あきら?」



「『悪気がある』と言うと、お前の鉄拳がとんでくるのか?ならば答えはこうだ。『悪気はない』」



「もういい。妄想でも何でもしてくれ」



少々の悪気を確かに感じたが、本当に進を怒らせようとしているわけではないのだ。進はあきらを適当にあしらって、自前の英単語帳を広げた。
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