【短】「好きだよ」~伝えないと決めた想い~
「お前、わかりやすいよな。
“なんで?”って顔に書いてある」
笑いながら先生があたしの顔を覗き込んだ。
「…やだっ、ちょっと今あたしの顔見ないで!絶対赤いから!」
「どうせ、夕焼けの色で赤くなってんだから今更変わんないって」
うぅー…
そういうことじゃないのに…。
やっぱり先生、あたしの気持ちに気付いてたんだ。
だから、あの日この場所であたしにあんな話をしたんだ。
「お前が夏のコンクール終わって、音楽室にいたの覚えてる?
実はさ、俺あの日お前の気持ちに気付かないふりしようって決めたんだよね」
…そんなの知ってるもん。
そう言われて、やっとおさまった涙がまた溢れてくる。
「わかってるよ。わかってるから」
「俺、その日にもうひとつ決めた事があるんだ」
「…何?」
「俺も、自分の気持ち、伝えないでおこうって」