オレンジ*ロード
彼女も俺の気持ちに気付いていたのか、お互いに進路という単語を口にしなくなっていた
だけど喧嘩をする訳でもすれ違う訳でもなく、俺達はいつも一緒に居た
高校2年の冬、今年初めての雪がこの町に降った
午後に降り始めた雪は学校が終わる頃になると3センチ近く積もっていた
自転車置き場に着いた俺達は、僅かに荷台に積もった雪を手で払った
『これからもっと積もるみたいだよ。風邪ひかない内に早く帰ろう』
俺は巻いていたマフラーを彼女の首に巻いた
彼女はコクリと頷き、自分がしていた手袋を俺に渡してきた
それを見て俺は思わずと笑ってしまった
『それじゃマフラー貸した意味がないじゃん』
『でも幸汰も風邪ひいたら意味ないよ?』
彼女はそう言うと片方の手袋を俺の手にはめてくれた
手袋は彼女の体温で温かい
『これならいいでしょ?』
彼女はもう片方の手袋を自分の手にはめて俺に見せた
俺は彼女のマフラーをきつく巻き直し、自転車に乗った
ハンドルを持つ右手には手袋、左手はコートのポケットに入れた
彼女も俺と同じように自転車に乗り、慣れない雪道を慎重に走る
日が短くなったこの時期はかなり薄暗くて、田んぼ道にある電灯の明かりが地面を照らしていた
『明日雪積もったら雪だるま作りたいな』
わずかに降っている雪は彼女の黒髪を白くしていた
『じゃぁ、明日朝早めに待ち合わせしようか』
俺がそう言うと彼女は嬉しそうに頷いた