オレンジ*ロード
『たぶん髪の毛抜けちゃうと思う』
弱音を吐かない彼女が見せた悲しい顔
俺は彼女の顔に触れた
『俺、短い髪の毛好きだよ』
それでも彼女はうつ向き『短い髪の毛すら残らないよ』と言った
そんな彼女を俺はそっと抱きしめた
『出会った時に坊主でも、俺は絶対好きになったよ』
本当にどんな姿になっても彼女が彼女である限り、俺の好きな気持ちは変わらない
彼女の顔にやっと笑みが溢れた
きっときっと彼女はこれから想像も出来ない程苦しい思いをするんだと思う
そばに居てもその苦しさを分かち合えないのが辛い
痛いよね、
苦しいよね、
辛いよね、
そう言葉でしか言えないのが悲しかった
出来る事なら全ての苦しさを心の底から分かってあげたかった
きっと患者の周りに居る親族はみんな思うだろう
代わってあげられたらいいのにと
彼女との面会時間は今までより大幅に減った
なにより彼女の体が悲鳴を上げていたから
話しをするだけで辛そうで、吐き気でずっと洗面器を持ったままの時もあった
強い薬の投与は思った以上だった
だけど、俺は一時間でも数十分でも数秒でも彼女に会いに行った
話しを出来る時はして、出来ない時は顔を見て、辛い時はずっとそばに寄り添った