山桜【短編・完結】
「隆も、くろみつだんご、食べたかったんだ?」

って聞いたら、

「だんごの中で一番好きかも?」

そう答えた。

そっか…。

あたしたちは、似ているんだね。

好きな場所。
好きなおだんご。
同じ気持ち。

隆が手渡した、おだんごを頬張る。

甘くておいしい。

桜のトンネルの向こうには、池があって、ボートを楽しむ家族連れや、カップルで賑わっていた。

みんな楽しそう。

子供達のはしゃぐ声に、なんともなしに見つめていると、

「乗る?」

不意に隆が聞いてきた。

見ているだけで、ラブラブムードが漂うモノに乗るのは、さすがに照れるから。

「乗らない」

断った。

「残念」

本気かどうか。
隆がつぶやく。

そうしてまた、あたし達は無言のまま、おだんごを食べた。

桜を見上げながら。

ゆっくりと雲が流れるように。

緩やかに時間は過ぎていく。

一通り公園内を歩き回ったし、もうそろそろ帰る時間かな?

そう思ったら、悲しくなった。

時がこのまま、止まったらいいのに…。

そんなことを願ってしまう。

『俺らは友達』

隆の言葉が胸に刺さった。




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