山桜【短編・完結】
殿が持つ剣から、血がしたたり落ちる。
月の光りに照らされて、輝くそれに、
「いや―――ぁ…」
千は叫んだ。
叫びながら、景丸を抱きしめた。
それは、赤い雫。
千の流す血の涙。
「わしは…姫が病だと思うたから、残り少ない人生を愛する者と過ごさせたいと…。
けれど。
お前はわしを、裏切ったのか?
その子は本当は誰の子か?」
血走った眼で、千を睨む。
「殿の子にございまする…」
初めて共に過ごした夜。
殿の相手をしたのは小雪であった。
別れを告げるなら、自ら会いに行きなさい。
小雪にそう言われて、景丸に会いに行ったのは、千自身であった。
「あの晩、私達はこの世で結ばれることを諦め、来世で必ず結ばれようと誓い合ったのでございます」
「……」
「殿がお考えになっているようなことは、この子に誓って、しておりませぬ」
相手は殿であれ。
子を身ごもった。
それは千にとって、城に来て初めて感じる喜びであった。
母として、景丸への執着を捨て、殿との人生を歩むことを、心に決めた。
それなのに……。
月の光りに照らされて、輝くそれに、
「いや―――ぁ…」
千は叫んだ。
叫びながら、景丸を抱きしめた。
それは、赤い雫。
千の流す血の涙。
「わしは…姫が病だと思うたから、残り少ない人生を愛する者と過ごさせたいと…。
けれど。
お前はわしを、裏切ったのか?
その子は本当は誰の子か?」
血走った眼で、千を睨む。
「殿の子にございまする…」
初めて共に過ごした夜。
殿の相手をしたのは小雪であった。
別れを告げるなら、自ら会いに行きなさい。
小雪にそう言われて、景丸に会いに行ったのは、千自身であった。
「あの晩、私達はこの世で結ばれることを諦め、来世で必ず結ばれようと誓い合ったのでございます」
「……」
「殿がお考えになっているようなことは、この子に誓って、しておりませぬ」
相手は殿であれ。
子を身ごもった。
それは千にとって、城に来て初めて感じる喜びであった。
母として、景丸への執着を捨て、殿との人生を歩むことを、心に決めた。
それなのに……。