山桜【短編・完結】
隆とは高校の入学式、出席番号順に並ぶと席が隣になるのがきっかけで、仲良くなった。

同じ中学出身のコがいなくて、ひとり不安気だったあたしに、

『どこの中学?』

と、気さくに話しかけてきたのが隆。

今でも、一番仲のいい男友達。

隆のことを『好きなの?』と、友達にもよく聞かれるけれど、正直わからない。

『好き?』と聞かれたら、『はい』と答えるだろう。

けれども、その気持ちを『恋?』かと聞かれたら、あたしは答えに困ってしまう。

『愛』とか、『恋』とか、そんな単純じゃない。

もっと下の、根っこの部分で、ふたりはつながっている。

…そんな感じ。

それを『運命の赤い糸』だというのなら、あたしは隆に恋しているのかもしれない。

だけど、自分でもよく分からない。

どんな感情を『愛』と呼ぶのか。

どんな気持ちを『恋』だというのか。

この胸の中にある想いを『恋愛感情』だと思っていいのかさえ、あたしには謎で、答えを出すことができない。

隆からも、『告白』されたことはない。

あたしの中で結論が出ないのは、隆の気持ちが分からないからかもしれない。




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