smooch【BL/完結】
けれどそっちにもすぐ逃げられて、甘味は一瞬で消えた。
いつもよりガードの固い彼からは、流されまいとする意志が感じられる。
どうしたんだろうと首をかしげてみても、それらしき理由は見当たらなかった。
とりあえず一旦離れてみると、
彼は自分のカバンをがさごそと探っていた。
そして、1つの箱を取り出した。
リボンで飾りつけられたそれは、茶系でまとまっている事もあり、まさかと期待半分不安半分で彼の行動を見守る。
「……母さんが、作ってて」
なげやりな口調でそう言って、その箱を突き出してくる。
「手伝わされて、貰ったから」
「うん、ありがとう」
受け取って開けてみれば、歪な丸がいくつも詰まっていた。
手伝ったのは丸める辺りだろうか。
それとも彼が譲り受けるほどの不器用さを、彼の母親も発揮した結果だろうか。
やたらとまぶされている粉に、さっきの彼の髪を思い出した。