smooch【BL/完結】
はにかんでいる彼が愛しくて堪らなくて。
肩の辺りに無理やり腕を差し込んで抱き込んだ。
半ばひっくり返すように抱き寄せられた彼は、多少身構えたものの、すぐに力を抜いて大人しく腕の中におさまっている。
それを良い事に、さらに近く引き寄せた。
彼の肩に顎を乗せると、すぐ近くからジッとこちらを窺う目と、視線が交わった。
「愛してるよ」
そう囁くと、彼はゴクリと唾を飲み込んだ。
そして、些か緊張したように口を開く。
「……僕も、愛してます」
たった一言で、俺は今、世界の誰よりも幸せなのだと思う。
ちゃんと向き合うように抱きなおして、腕に力をこめる。
そろそろと伸ばされた彼の腕が、背中に回された。
柔らかな体温が伝わってくる。
絶対に手放したくない、逃がす事など出来ないと、伝えるようにきつく抱きしめた。
「せんせー、痛い」
そう訴えながらも笑う彼に小さく謝罪し、唇を合わせる。
当たり前にやってくる明日は、今日と同じ位良い物だといい。
きっとそうに違いない。
今ならどんなに無茶な未来だって信じられる。
さあ、新しい明日を始めよう。
END