smooch【BL/完結】
「ちゃんと料理位出来るようになった」
「まあ、4年も一人暮らししてりゃあね」
軽い引っ越しを終えて早々に、
彼は得意げな顔で台所に立った。
元々荷物は少ないそうなので、
宅急便を待たなくても新生活を始められそうだ。
いそいそと調理器具を確認する彼に
どさくさに紛れて、
多分忘年会の賞品か何かだった
フリル付きのエプロンを手渡すと、
「バカじゃないの?!」
久々に、彼の睨みを見る事ができた。
上目遣いのそれは、やっぱり可愛らしい。
会わない間にも身長は伸びていたけれど、
俺との身長差はまだ大分ある。
彼はエプロンに対して、
「新婚カップルかよ」とかぶつくさ言っている。
「似たようなものだろう?」
今度は彼持参のエプロンを渡しながら言う
彼は頬を赤らめたまま、受け取ろうとする
だけれども、掴んだままで離してやらない
「……何?」
照れ隠しで睨みつけるとか、
そういう所が全然変わらなくて、安心した
でもそんな事を言うのは一先ず置いて。
「今日はさ、適当に買ってくるか
それか出前でも取ろうよ」
「……何で?」
訝しげに尋ねてくる。
「ずっと出来なかった事しようよ」
彼の腕を掴み、とりあえずリビングの
ソファーへと移動する。
「いい?」
無言のままの彼にそう聞くと
やっぱり口は開かないけれど、頷いた。
だから、あの頃と、
4年間出来なかった事を思う存分、楽しもうと思う。
【もしもの未来 終】