smooch【BL/完結】
先に上がってもいいと言ったけれど、
彼は俺が湯船に入るのを待ち構えている。
……そんなに一緒に入りたいのか?
2人入るにも、彼は小柄だし
結構余裕があるけれどここはあえて、
彼を俺の脚の間に座らせるようにした。
何度かソファーでやっているからか、
彼に抵抗も無いらしく、拒まれなかった。
水の滴る前髪を掻き上げ、寄せてやると
いつものように背中を寄りかからせてきた
「……僕さ、あんまりこういうのした事無いんだよね」
「そうなんだ?」
以前よりは馴れてきたせいか、
それとも今日は特別なのか。
頭を撫で続けていると、
気持ちが良さそうに目を細めている。
「うん。父親居ないし、
こうやる相手が居ないからさ」
「……そっか」
つまりそれは、
俺は父親感覚という事なんだろうか?
いや、それは違う事は知っている。
けれど、今、この状況で。
俺は彼に意識されていないという事だろう。
それに、甘えられる分には構わない。
好きなだけ、何でも言えば良いと思う。
そしたらいくらでも甘やかすつもりだ。
しかし今のこの、
腕の中に納まっている状況で。
長時間しんみりされるのはちょっと困る。