smooch【BL/完結】


「ちょっと手、貸して」

まさかこれ位でしか出来ないほど、
握力が弱かったりするのだろうかと不安になり、下ろさせた手を握った。


「力いっぱい握ってみようか」

そう言うと、何を試されているのかを理解したようで、握っていた手に、もう片方の手も重ねられた。

そして俺の手を両手で掴み、おそらく全力をかけて握る。


「……っ、うん、わかった。
わかったから、もう離していいよ」


握力に問題はなく、
どうやらただの遠慮だったようだ。
……普通に痛い。

でも1年ほど前に比べ、
背の丈以外も大分成長しているようで安心した。


「じゃあ、はい、前向いて」

そう急かされながら、またパソコンに向き直る。


不機嫌になったのか、
はたまた照れてでもいるのか。

再開された手は、さっきまでより数倍強い力を加えてきた。


振り返ってもそっぽを向いていて、
次に彼と視線を合わさるまでは数日かかった。

これは後から解った事だけれど、
どうやら他にも考えてはいたらしい。
しかし実行できなかった事が、彼を不機嫌にさせていた、と。
つまりは八つ当たりだったらしい。

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