菊の花
「姫様、将様がお見えになられました」
障子の向こうで使いの声がする。
「通してさしあげて」
沙羅はそう言うと鋭い目で清煉を見た。
「失礼つかまつります。泰国の頭主の次男にございます」
そう言いながら頭をさげて部屋へ入って来たのは将と桔梗だった。
「頭をあげて下さい」
沙羅の優しい声に頭をあげると将は目をみはった。
絹のような、なめらかな黒髪、白く透き通るような肌に、ぱっちりと開かれた大きい目、うっすらと紅潮している頬、薄く紅がひかれた唇、着物を着ていても消えることのない体のライン
挙げだすときりがないくらい美しい女性が将と桔梗の前に笑顔で座っていた。