菊の花
第二章 幸せ


婚約が順調に整ってからはや一週間、将は毎日のように藤国に通うようになった。

「沙羅様、将様がお見えです」

ここのところ毎日、沙羅はこの言葉を聞いている。

「通して差し上げて」

しかし、それが欝陶しいとは沙羅は思わなかった。

「おはようございます。沙羅姫」

障子から将が入ってくる。
「おはようございます。将様」

沙羅も丁寧に挨拶を済ませる。

「そう言えば、今日で婚約してから一週間が経ちましたね」

将は嬉しそうに笑いながら沙羅に話す。

そんな将の姿を見ていると沙羅は幸福な気分に浸れた。

「沙羅姫?具合でも悪いのですか?」

「!・・・心配なさらないで、少し呆けていただけです」

沙羅はニコリと笑う。その笑顔を見て、将は真っ赤になる。

「将様も無垢ですね」

沙羅は真っ赤になった将を見て紡いだ。

「無垢って・・・せめて純情って言ってくれませんかね・・・」

「それは失礼しました。純情ですね。と言うか・・・認めるのですね」

沙羅はニヤリと笑う。その姿さえも画になるので、将はどぎまぎする。

「っ・・・まっ・・・まぁ、嘘は良くないですから」
「本当に、貴方は私が持っていないものを持っていらっしゃいますね」

沙羅はフゥ・・・と溜め息を漏らす。


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