菊の花
それからすぐに牛車が動き出した。
「将様、この度は私の従者が・・・本当に失礼しました」
紗羅は将に深々と頭を下げる
「紗羅姫まで・・・よしてくださいよ」
「しかし・・・」
「私が許したりすることではありませんから。確かに桔梗は俺の従者ですが、俺の“所有物”ではありません。だから俺が判断していいことではないんですよ。だから頭をあげてください」
紗羅は将の言葉に声も出ずに口をあんぐりと開けて放心状態に陥っていた
「紗羅姫?・・・紗羅姫!お気を確かに」
紗羅の目の前でひらひらと将の手が舞う
「・・・本当に将様らしいですわ。だから私はこんなに貴方に惹かれてゆくのですよ」
紗羅は恥ずかしそうに顔を赤らめながらも将を見つめる
「・・・俺はそんなふうに照れながらも素直な紗羅姫が好きですよ」
将は微笑んで紗羅を見つめ、紗羅の顔は真っ赤に染まる
「紗羅姫のお顔、林檎みたいですね」
「!?放っておいてください!というか見ないでください!」
牛車の中には珍しく紗羅の叫ぶ声が響き、知らぬ間に将の父の城に着いていた。