真輔の風
「それなら俺だって… 」
「お前は弱いだろう。足手まといだ。
ここまで付き合ってくれて嬉しかったよ。
明日、また遊びに来てくれ。
一緒に龍雄を見舞いに行こう。」
晩生のようでも、真輔は何となく分かってきた。
茜が今どこで何をしているか。
じいちゃんなら頼りになる。
80歳になっている栄作を…
真輔は祖父であり父のように思って育ってきた。
年寄り、という言葉を使っても、
脳の奥では頼もしい男でしかなかったのだ。
しばらくしてタクシーが止まり、中から吉沢百合子が出て来た。
「吉沢さん、どうして家に帰らないのだ。
今までどこにいたのだ。」
「これ、手帳… 拾ったから届けようと… 」
信一のその言葉に、百合子は一瞬顔を引きつらせた。
「昨日、あそこにいたのか。
龍雄がやられたのを見たのか。」
真輔はせっかちに声を出している。
やはり信一のような、細やかな気配りにはかけているらしい。
「えっ、私… そんなこと… 」
真輔も信一も、
想像していたことと違う反応を百合子がするので、
ややこしくなってきた。
自分たちの初めの推理は違っているのか。
やっぱり茜が…