真輔の風

「それなら俺だって… 」



「お前は弱いだろう。足手まといだ。
ここまで付き合ってくれて嬉しかったよ。
明日、また遊びに来てくれ。
一緒に龍雄を見舞いに行こう。」




晩生のようでも、真輔は何となく分かってきた。

茜が今どこで何をしているか。

じいちゃんなら頼りになる。

80歳になっている栄作を… 
真輔は祖父であり父のように思って育ってきた。

年寄り、という言葉を使っても、
脳の奥では頼もしい男でしかなかったのだ。






しばらくしてタクシーが止まり、中から吉沢百合子が出て来た。




「吉沢さん、どうして家に帰らないのだ。
今までどこにいたのだ。」



「これ、手帳… 拾ったから届けようと… 」




信一のその言葉に、百合子は一瞬顔を引きつらせた。




「昨日、あそこにいたのか。
龍雄がやられたのを見たのか。」




真輔はせっかちに声を出している。

やはり信一のような、細やかな気配りにはかけているらしい。




「えっ、私… そんなこと… 」




真輔も信一も、

想像していたことと違う反応を百合子がするので、

ややこしくなってきた。

自分たちの初めの推理は違っているのか。


やっぱり茜が… 
< 103 / 155 >

この作品をシェア

pagetop