真輔の風

「吉沢さん、僕に用事って。まずそれから聞くよ。
そのために僕の家を訪ねて来たのだろ。」




その時になって、真輔は落ち着きを取り戻した。




「ええ… あの… 私、見たから… 
誰かに知らせないといけないと思って… 
宮村君には会えなかったし… 
小田切さんなら家にいると思って… 

本当は警察へ行かなくてはいけないのだけど… 」




百合子も栄作といる時は落ち着いていたのだが、

真輔と信一の顔を見て、
それまで隠れていた感情が顔を出したように、
興奮して話そうとしている。

だから前後の説明が無いままに話を始めた。




「ちょっと待てよ。何の話だ。
分かるように話してくれ。」




考えてみれば、真輔は百合子の事は噂でしか知らない。

いきなり話されても、何の事を言っているのか… 

自分たちの名前は出ているが… 




「私、夕方湊川神社にいたの。
その近くに住んでいる友達と話をしていたの。

それから話しながらブラブラ歩いていたら… 
もう暗くなっていたけど… 

小田切さんと同じクラスの人が変な男に… 
あれはヤクザのようだったから、
何をされるのかは想像がついた。

私たちは急いでその場から離れて… 
でも、どうしても気になって… 
宮村君を捜したけど見つからなくて… 

それで小田切さんに… 
小田切さんの判断で警察に知らせるかどうするか決めてもらおうと思って… 

ごめんなさい、小田切さんしか思い浮かばなかったから… 
家は小学生のときから知っていたから… 」 

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