真輔の風
「それって、まさか茜、川崎茜のことか。」
真輔はその偶然に驚き…
神に感謝したいぐらいだった。
「名前は知らないけど…
小田切さんのことを真輔君、って呼んだのを聞いたことがあるから…
二年生で… 」
「茜だ。」
真輔は信一と顔を見合わせた。
やっぱり茜は…
信じられないことだが、本当のようだ。
「車に乗ってくれ。
信一、お前はスナックの様子を見ていて、
茜がいなかったら、そこにいる警察官にも話してくれ。
場所はタクシーに乗りながらわかり次第連絡する。
じいちゃんに県警にも連絡してもらうが…
誰が早いか、
とにかく早く行かなくては… 」
その時の真輔、
まるでシャーロック・ホームズ、か、
明智小五郎にでもなったような顔をして指図している。
茜は… 前日のことは誰にも言わずに、
何もなかったことにしよう、と横井晴美と話を決めた。
終業式なのに休んでいた
龍雄や真輔のことを気にするゆとりもないまま、
母に気付かれないように普通通りに塾へ向った。
勉強など出来る精神状態ではなかったが…
行くところも無かった。
昨日は、男たちに捕まって着ていたものを剥ぎ取られ、
体をなめるように触られた。
恥ずかしくて、恐ろしくて…
気を失いそうだった。