真輔の風

そして、新開地の事務所の近くで、車から降ろされた時、

恐怖に駆られた茜が逃げようとあがいた。

そこを吉沢百合子が見たのだ。



何故こんな事になったのか。

茜は真輔たちが危惧しているような援助交際には無関係だった。

母親の借金が直接の原因とも言いかねない。

茜の事を山城組の組長・山城構造が気に入ったのが、

そもそもの始まりだった。


ふざけるな、という話だが… 


スナックを任せている神山さと子の口から、

金を貸している川崎昌代という女はいい女だ、ということを聞き、

スナックへ行ったついでに覗いてみた。

確かに昌代は垢抜けした大人の女、という感じを漂わせていたが… 

その時帰ってきた娘… 

スラリと伸びた肢体、

まだ男を知らぬ自然美の茜、

美人顔ではないが、

磨けば輝く素質を漂わせている色気があった。



62歳の山城は堂々と… 

茜を自分のものにしたい、という邪念を抱いた。

女はもう飽きた。

若いだけのあばずれも要らん。

高校生だが、女の魅力をその制服の中に隠し持っている茜を… 

と言う事だった。


そして今までは、自分がその気になれば何でもスムーズに事が運んだ。

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